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スポーツ外傷

スポーツ外傷

格闘技などのコンタクトスポーツは常に頭部外傷の危険にさらされているし、野球やスキー、スノーボードといったリクリエーションとして人気の高いスポーツでも偶発的に頭部外傷は起こります。脳振盪は、スポーツによる頭部外傷で最もよく見られる頭部外傷です。
脳振盪には「一時的に意識がなくなっても、あるいは記憶がとんでしまっても意識が戻れば大丈夫だ」、「意識がしっかりしているから脳振盪ではないよ」などというコーチも見受けられます。グラウンドで気を失ったラガーマンは、やかんに入った水が顔に浴びせられると正気を取り戻し、何事もなかったかのように颯爽とプレーに復帰することがありましたね。

脳震盪の症状

意識消失、けいれん、健忘、頭痛、頭部圧迫感、頚部痛、嘔気・嘔吐、めまい、ぼやけてみえる、ふらつき、光過敏、音過敏、素早く動けない、霧の中にいる感じ、何かおかしい、集中できない、思い出せない、疲労・脱力、混乱、眠い、感情的、イライラ、悲しい、不安・心配

繰り返し脳損傷がもたらす悲劇

脳振盪は一時的に神経障害が出現しますが、完全にもとの状態に回復します。ところが、こうした軽微な脳振盪でも繰り返されることにより、プロボクサーに代表される慢性脳損傷を引き起こします。慢性の経過を経て認知症になったり、パーキンソンのような症状をだしたりします。アメリカプロフットボールの選手は同年代の一般人口に比べてアルツハイマー病や認知障害に至る可能性が有意に高いといった報告もあります。
一方で短期間に軽微な頭部外傷を繰り返すことによって致命的な脳損傷となるセカンドインパクト症候群が注目されています。初回の受傷から頭痛やめまいなどの脳振盪の症状が続いていたにもかかわらず、プレーに復帰し受傷し、時には命を落とすこともあります。スポーツに高じる健全な若者が壊滅的で悲劇的な脳損傷をわずらうことからその症候群は過剰に強調されているようにも思います。

脳震盪後症候群

頭痛、めまい、集中困難、健忘症、うつ病、感情鈍麻、不安感がしばらく残ることがあります。

急性硬膜下血腫と脳振盪

死亡事故や重篤な後遺症を残すような重症のスポーツ頭部外傷はボクシングやアメリカンフットボール、ラグビーに多く見られ、急性硬膜下血腫の頻度が最も高く死亡事故の80%以上を占めています。脳振盪の発生頻度の高いスポーツは急性硬膜下血腫の発生頻度も高いことが報告されています。スポーツによる急性硬膜下血腫は架橋静脈の破綻によるものがほとんどで加速度による脳の変形・移動がその原因であり、この外力の作用は脳振盪の発生機序と共通しているためと考えられています。すなわち脳振盪の発生、とりわけ、繰り返される脳振盪を予防することがスポーツ重症頭部外傷の発生の予防につながります。

脳振盪の診断

短期間に繰り返される軽微な脳の損傷が重篤な脳障害を引き起こす可能性があるならば、初回の脳振盪を的確に診断することが重要であることは言うまでもありません。そして症状が癒えるまで競技への復帰を見合わせることが、重大な脳損傷を予防手段です。
American Academy of Neurology; AAN(アメリカ神経学会)では、脳振盪は外傷により引き起こされる意識の変容であり、意識消失を伴うことも伴わないこともあると定義しています。実はスポーツに起因する脳振盪はほとんど意識消失を伴わないのです。また意識消失があるか、ないかは重症度とはあまり関係がないのです。

健忘

  • 逆行性健忘  受傷前の記憶が想起できなくなる
  • 外傷後健忘  受傷後の記憶想起の障害

「おれはここで何をしていたんだ」
「なんでここにいるのだろう」
健忘が強く残っていると過去と現在のつながりを求めて何度も尋ねてくることがあります。とりわけ外傷後健忘は脳振盪の重症度に関係するといわれています。

SCAT

脳振盪を手際よく判定する方法(SCAT: Sports Concussion Assessment Tool)
脳振盪の理学的評価だけでなく、選手(患者)の教育のためにも使用される基本的な指針であり、新しいスタンダードとして作成され、妥当性も検証されています。

繰り返し脳損傷の予防とプレーへの復帰の目安

脳振盪を経験すると、経験していない選手に比べて脳振盪を再び患う確率は4倍も高いといわれています。
スポーツ外傷による身体・神経機能障害は選手生命を絶つだけにとどまらず、社会を担うべき若者が大きなハンディを背負うこととなり、社会的にも大きな損失となります。
不可逆的な脳損傷の発生を予防するためには先行する軽症外傷の時点で競技を中止させる必要があります。
繰り返される脳振盪がもたらす重篤な脳損傷や機能障害をよく理解し、予防対策について把握していること。すなわち、スポーツに携わる医師はスポーツによる頭部外傷を熟知し、さらに選手やコーチ、トレーナーなどのスタッフに教育・啓発することも大切です。

脳震とうを起こしたら脳神経外科で検査を

頭部外傷後、何らかの意識障害が発生したものの、MRI検査によって、脳の内部に異常が認められない場合に、「脳震とう」と診断されることになります。脳内に異常がみられなければ、安静にして様子を見る処置が取られます。
脳震とうを起こしたと思ったら、脳神経外科で検査を受けておきましょう。

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