顔面神経麻痺とは
はじめは目がショボショボしたり、目が何となく乾くといった症状に気が付き、よだれがが垂れたり、食事中に汁物が口角からたれてきたりして変だなと思います。2-3日すると、顔の表情が非対称になってきます。
顔面神経によって支配されている顔面筋が運動麻痺を起こした状態です。顔面神経は顔面神経管と呼ばれる狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経が腫れることによって管の中で圧迫され、これによって麻痺が生じると考えられています。
原因疾患が明らかな症候性顔面神経麻痺と、原因がはっきりしない特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)とに分けられます。
原因がはっきりしないといってもベル麻痺の原因は、ヘルペスウイルス感染症であることが多いです。症状がでる数日前、数週間前に風邪をひいて、体調を崩していたり、仕事や家事が忙しく、ストレスもかかって疲労が蓄積していたエピソードがあったりします。
どんな症状がみられますか?
突然始まる片側顔面筋の運動麻痺が主な症状です。その結果、額にしわを寄せられない、眼を閉じられない、口角が垂れ下がる、口角からよだれが垂れる、などの症状が生じます。麻痺側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じられることもあります。麻痺側の舌の前方3分の2あたりの味覚障害を伴うこともあります。典型的な訴えに、ものを食べた時、金属を口に入れたような感じがするというものがあります。目が閉じにくいため、涙で潤すことができず、角膜(黒目の部分)が乾燥しやすくなります。
MRIなどによる画像診断が必要なケースもある
この疾患に典型的な顔の表情が現れますので、診断は比較的容易です。しかし、原因となる病気がある場合、また両側に同時に発症したり、何度も繰り返したりする場合は、MRIなどによる画像診断を要します。MRIで顔面神経のどの部位に感染による変化が現れるか調べます。造影MRI(注射をしてMRI検査をします)で内耳道遠位部、迷路部、膝部に異常増強効果がみられることがあります。
診断は、血液検査でウイルスの抗体価を調べることにより原因ウィルスを特定します。
副腎皮質ステロイド療法や、血流改善剤、ビタミン剤、神経賦活剤などの投薬治療を行います。目が閉じられないと、角膜が傷ついてしまい、視力低下の原因になるため、点眼薬を処方することがあります。
リハビリテーション療法も重要で、麻痺した筋肉のマッサージや、顔面の筋肉を働かせる練習などが効果的です。
早期の治療開始で改善することが多い病気ですが、高齢、味覚障害、糖尿病の既往、顔面筋の完全麻痺がある場合には治りにくいことも報告されています。